統治者の断章

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シークレットストーリー

一章 compare

灰色の空を貫くような、摩天楼。
端末に情報を委ね、自動運転の乗り物に行く手を託す人々。
もはや、機械の恩恵を受けない人生なんて考えられないほど
科学の発達した国家に、私達は生きている。

巨大な端末が鎮座する研究室に、ノックが響く。
現れた上長は、次の会議に向け、
研究中のデータを揃えておくようにと通達した。
緊張し俯く私とは対照的に……

「承知しています。すぐお渡ししますね!」

室内の同僚は、私と瓜二つの顔で朗らかに返す。
データを受け取った上長は、しげしげと私達を見比べると、
「やはり興味深い」と呟いた。
改めて言及された私達は、思わず顔を見合わせ
くすぐったくて、どちらからともなく笑ってしまった。

私達は双子だ。
似たような体型、身長、そして同じ顔。
見た目の違いは、髪型くらいのものだ。
妹の私が腰まで長く伸ばしているのに対し、
姉は肩に少しかかる程度の短さに切り揃えている。

姉は年齢の割に明るく無邪気で、その髪型も相俟ってか
どこか少女めいたところがあった。

それとも、人当たりの良さゆえか。
彼女は秀でていることを鼻にかけず、
いつも誰かの助けになろうとしている。
誰からも好かれ、頼りにされる自慢の姉……

私はというと、そんな姉の陰に隠れ、
他人とのコミュニケーションは姉頼り。
決して、人としても研究員としても優秀とは言えない。

それだけ正反対な私達が、
同じ研究所で共同製作を続けているなんて、
やっぱり興味深い事象に違いない。
とはいえ、私達の想いは一つなのだ。

起床、身支度、食事、出勤や登校……娯楽に休息。
その日々の中で人に寄り添い支援し導く、人工知能の開発。
人の身に及ぶ脅威を未然に防ぎ、
その先に、誰もが豊かに生きる未来を保証する。
それが私達姉妹の研究思想だ。

と言っても、姉の提唱した理念に
私が賛同しただけに過ぎないのだけど。

その夜。
いつものように研究に没頭し、
帰宅する時間さえ惜しんでいた私達は、
研究所の仮眠室で身体を休めていた。

一分一秒すら無駄にはできない。
今や他国でも人工知能の研究は進められており、
早急に技術を確立し、発表する必要があった。
先を越されれば、技術を独占されてしまう。

しかし、適切な休息も必要だ。
私は逸る気持ちをどうにか抑え、寝る努力をする。

カタ。

そんな努力を微かな物音が邪魔した。
音はどうやら私達の研究室からしている。
姉も寝付けず、抜け駆けしているのだろうかと起き上がると、
ちょうど姉も仮眠室から出ようとしているところだった。
では、物音の正体は?
私達は、同じく仮眠をとっていた同僚を起こさないように、
静かに部屋を抜け出し、研究室に向かった。

そこにいたのは……
見知った顔しかいないはずの研究所に、見知らぬ大男。
その男は、私達の端末をコソコソと操作していた。
他国のスパイだと、私は直観する。

固まる私の手を取って、姉は視線で訴える。
「わたしを信じて」と。

男は懐から拳銃をとり出し、私に向けた。
それと同時に、姉は男目掛けて駆け出す。

そして、発砲と同時に男に体当たりした。

的を外れた銃弾はキャビネットのガラスを破砕。
降り注ぐガラスにまみれて、尚も凍りつく私とは反対に、
やはり姉だけは冷静だ。

彼女はそのまま男に飛びつき、奪ったものを私に投げる。
それは、男が端末から吸い出していた、記録媒体。
私達の理想と成果、そして祈りが込められたデータだ。
咄嗟に受け止めた私に、姉は「行って」と微笑む。

男はデータを手にした私に狙いを定めようとするけれど、
足に追い縋る姉が、決して許さない。
殴られようと、蹴られようと……撃たれようと。

ぼろぼろと涙をこぼして、私は走った。
「誰か、誰か」と泣き喚きながら、助けを求めて。

ようやく鳴り響き始めた非常ベル。
駆けつけてくる警備員。
ようやく助かったと思ったのも束の間。
胸が痛み、急速に心臓が冷えていくのに気が付いた。

そんなものは錯覚だ。
何も聞こえないし、見たわけでもない。
けれど私にはわかってしまった。
―― 姉の心臓が止まったのだと。


二章 migration

同じ日、同じ性別、同じ顔に生まれた双子の私達。
声や遺伝子に至るまでほぼ同じなのに、
能力や性質は、残念ながら似なかった。

勤勉で何でもてきぱき進める姉は、私より朝が早い。
起きる頃には身支度を済ませており、
朝食を用意してくれていたこともあった。
だから私は、一緒に暮らしていたものの、
大人になってからの彼女の寝顔をほとんど見たことがない。
―― それが、こんな形で見ることになるなんて。

すっかり慣れてしまった、消毒液の香る場所。
面会時間の終わりは迫るものの、
帰宅する人々の流れに逆らって、私は奥へ向かった。

「お待たせ」と、軽い引き戸を開けて声をかけると、
淡い期待はしぼんで消えていく。
部屋の中央に据えられた、機械の繋がる大仰なベッド……
返事をするのは、その駆動音だけだ。

「お姉ちゃん、今日も聞いてくれる?
研究、うまくいってるんだよ……」

薄暗い病室を唯一彩る、一輪挿し。
その水を替えながら、眠る姉に話しかける。
擦過傷、打撲痕、腫れ上がった肌は癒えたというのに、
恐ろしいあの夜の顛末を、彼女はまだ知らない。

私達の研究成果 ―― 高性能の人工知能、そのデータ。
他国のスパイが研究室から奪おうとしていたものの、
姉が身を挺したおかげで犯人は捕らえられ、
私とデータは無傷で保護された。
彼女の……心臓と引き換えに。

救出されたとき、姉の鼓動はすでに止まっていた。
今や胸骨の奥に心臓はなく、機械がその代わりを務め、
人工呼吸器や数多のチューブが必死に命を留めている。
無邪気に笑う姿を知る元同僚達は、痛々しい姿に顔を背け、
涙を浮かべて足早に帰っていったが……
最近は、めっきり会うこともなくなってしまった。

あの事件を経て、私は別の研究所に招聘された。
国家直属の、より専門的な研究機関。

皮肉な話だが、他国に技術を狙われたことで、
国内での私達の研究の注目度も上がったのだ。

ここならもっといい待遇で、姉の分まで研究できる。
日々は多忙を極めるけど、何より予算のつき方が違う。
今の設備なら、人工知能の演算能力を高めることも、
負荷を気にせずテストし続けることもできる。
そうすれば、より完全に、より完璧に……
思い描いていた理想に近づけられるはず。

姉を欠いては完成が危ぶまれたものの、
高度な設備や支援を得られた今となっては、
私一人の研究でも問題なく進められている。
まるで、姉などいなくても支障ないかのように……

心無いかもしれないが、私にはやるべきことがあった。
人間の生活を豊かにするために。
国家の期待を、裏切らないように。
私達の積み上げてきた成果を、失わぬように。
そのために……

私は、姉の頬に手を伸ばす。

「私が代わりに……いいえ」

血の気のない肌を撫でると、自然に笑みが浮かんだ。
冷たい姉の頬と、熱く火照った私の指。
感じたことのない衝動が、胸の奥で渦巻いている。
私にも、できるはずだ。
常に前を歩き、完璧な未来を選ぶ、姉のようなことが。

「私一人の力で研究を完成させてみせるから、
ゆっくり寝ていてね、お姉ちゃん……」

静かな病室には、呼吸器の音しか響かない。
薄暗い部屋で眠る姉の顔に、そっと私の影が落ちる。
窓の外では役目を終えた太陽が身を横たえ、
目覚めたばかりの月が輝き始めていた。


三章 overwrite

ある日、昏睡状態の姉の見舞いから、新しい研究室に戻ると、
同僚達が慌てふためいていた。
どうやらお偉方が視察に来たものの、連絡の行き違いで、
何の用意もできなかったらしい。
せめて資料を……と慌てる室長達に、私は記録媒体を手渡す。

「個人的にまとめておいたものです。
よろしければ、どうぞ」

とびきりの笑顔を添えると、室長は「気が利くね」と喜び、
やってきた集団を出迎えに行く。
わずかな好奇心につられて目を向けると……
集団の中に、かつての上長の姿があった。
彼は幽霊でも見たような顔で私に駆け寄り、
「身体はもう大丈夫なのか」と尋ねる。

私が首を振って「妹ですよ」と返した途端、
彼は安堵とも戸惑いともつかぬ息をついた。

「髪を短くしたせいか、ずいぶんと印象が変わったな。
それに、さっきの様子……まるで…」

「何をおっしゃっているんですか?
私はずっと……『こう』でしたよ」

すると、元上長は困惑したように顔をこわばらせ、
失礼な問いかけだと思ったのだろうか、
挨拶もそこそこに会議室へと去っていった。

気立てがよくて、賢くて。
周囲のことまで気にかける、献身的な……私の姉。
何でも一人でできてしまう人だったから、
双子と言えども、私は彼女の後を歩んできた。

まるで未来視でもするかのように、姉の読みはよく当たった。
それは彼女がよく学び、思考し、答えを導き出していたから。
確固たるデータを基に、それこそ優れた機械のように、
彼女は正解を弾き出す。
生まれた瞬間から隣に正解があった私に、
『選択』する余地などないくらいに。

研究者を目指したのだって、姉がそうと言ったからだ。
彼女について行きさえすれば、それが正解になる。
姉と同じ道を歩む限り、私に不正解は訪れない。
何も選ばず、彼女を手伝うだけで、
毎日を笑って、悩まずに過ごすことができた……
だから姉の『選択』を、私は肯定し続けなければならない。

元上長との再会から数日後。
製作中の人工知能の挙動が不安定になる。
入力値を変えてみても、環境を変えてみても、
テストを始めるとエラーを吐き出してしまうのだ。
これまでの順調な進捗が嘘のように、私はスランプに陥っていた。

「疲れてるんじゃない? 少し休んだら?」

「たまには人の研究を参考にしてみるとか」

そんな同僚達の言葉すら、煩わしくて…
「何もわからないくせに!」と叫んだ瞬間、
世界が瓦解していくのを感じた。
これまでとは一変した私に困惑した彼らは、
腫れ物に触るような様子で離れていく。

「違うの、ごめんなさい……」

反射的に謝るも、発せたのは蚊の鳴くような声だけ。
思わず私は研究室から逃げ出し、化粧室へ飛び込んだ。
腹の底から溢れ出す、焦燥感、罪悪感、自分への嫌悪感……
それは胃液まで嘔吐しても、吐き出しきれるものではない。

短くしてもなお鬱陶しい髪を掻きむしり、
いつまでも消えない胸の不快感を紛らわせようとする。
この途方もない無力感は……姉のせいだ。

とうに日の沈んだ姉の病室を訪れると、
主治医が巡回に来ていた。
主治医によると姉の状態は落ち着いているらしい。
それだけ伝えると、主治医は静かに病室を辞していった。

機械の心臓に繋がれて、眠り続ける蒼白い姉。
あの日のように、私は彼女の頬を撫でる。
研究室で起こったこと、姉ならあんな醜態は晒さなかったろう。
彼女であれば同僚の心配を素直に受け入れ、感謝し――
いいや、そもそも行き詰まることなどなかったはずだ。
姉の分まで……姉に代わって研究を完成させようと思ったのに、
結局私は、いつまでも追いつけないままでいる。

私は機械の心臓に目を向けた。
姉を繋ぎ止めているのは、この機械だけ。

「この機械さえ……」

噛み締めた唇からは、いつの間にか鉄の味が滲んでいた。


四章 option

闇に差し込む、白い光。
重力に抗って、張り付いた目蓋を開く。
白亜の天井は柔らかな朝日に照らされて、
たゆたうカーテンの影が優しく揺れていた。

声を出そうとしたが、呼吸器越しではくぐもるばかり。
点滴に繋がれた腕は痩せ細っている。
首を巡らせて辺りを見たくても、長く伸びた髪に阻まれる。
……『わたし』は、どれだけ眠っていたのだろう。

駆けつけた主治医や看護師達は、
わたしの目覚めを喜び、傷の状態を説明してくれた。
どれだけ重傷を負っていたか、どれだけ危うかったか。
心臓が破れてもなお、機械の力で生きようとしていたかを。

あぁ、そうかあの時、わたしは……
確か、わたし達の研究データを守るために、
男に撃たれたはずだ。
―― そうだ妹は……

私は、その場にいた人達に妹の安否を尋ねた。
把握しているかは微妙なところだったが、
咄嗟に聞いてしまったのだ。

もし、無事なら見舞いに来てくれているだろう。
であれば、病院の人達も把握しているはず……

しかし、主治医は顔を曇らせる。

「その心臓は、もう、機械ではありません」

何故、今、心臓の話を?
そんな疑問の答えは口に出すまでもなく明白だ。
目覚めたばかりのぼやけた頭でさえも、わかってしまう。

呆然とする私に、主治医は一通の封筒を手渡した。
見慣れた筆跡の手紙は、『お姉ちゃんへ』から始まっている。

硬質で繊細な、妹の筆致。
それには彼女の苦悩と呪縛、そしてわたしへの愛が
惜しみなく記されていた。
わたしが倒れてから、初めは一人でも順調だった
人工知能の研究が進まなくなったこと。
二人の理念を目指し続けたかったけれど、
自分だけでは研究を続けられないこと。
実力不足を痛感する頻度が増えてゆくたびに、
自分ではなく、わたしがいればと考えるようになったこと。
わたしなら研究を発展させることができるはずだ、
どうか国家のために、そしてわたし達の夢のために……
だから……心臓を託したのだと。

初めは穏やかだった筆跡が、次第に乱れ、かすれ、
しかし、最後には強くゆったりと推移していく。

『私の分まで、お願い。いつまでも大好きだよ』

あれだけキーボードを叩く生活をしていながら、
最期の言葉に筆記を選んだ理由なんて、もはやわからない。
それでも文面を見れば、想いは痛いほど伝わってくる。

握りしめた紙面が、ぐしゃりと皺を作る。
溢れる涙が、インクの文字を滲ませてしまう。
それでもわたしは、止めることなどできなかった。
胸骨の内で速まる鼓動……それは妹の心臓だ。
どれだけ苦しんだのだろう。
どれだけ一人で、頑張り続けてきたのだろう。

妹は、小さな頃からわたしについて回っていた。
わたしの選択を尊重し、いつも凄いと喜んでいた。
だからわたしは、妹のために選択し続けたのだ。
彼女が幸せにいられるよう……笑って穏やかに過ごせるよう。

それがどうして……こんな重大な選択をしてしまったのか。

言うまでもなく、妹の選択は誤りだ。
自分の命を犠牲にして、わたしを選ぶなんて間違っている。
けれど、彼女にそんな選択をさせたのは誰?
それしか無いほどに、追い込んだのは誰?
……決まっている、わたしなのだ。

彼女を死なせたのは、わたしの『選択』のせいだ。

白い朝日は病室を眩く照らし、手紙や封筒までも透かして――
何かが同封されていることを知らせる。
取り出してみれば、それは小さな記録媒体だった。
見るまでもなくわかる。これは妹の研究データ。
わたし達が互いに命を賭けて守ろうとした、共同研究……

人を遥かに凌駕する演算能力を有し、
瞬時に合理的な『選択』をしてくれる、未来の指針。

人々は間違える。
ならば、この人工知能に総てを委ね、管理させてしまえば……
自ら選択することを放棄してしまえば……
間違いのない幸福な生活を送ることができるはずだ。

そう、妹の『選択』だって、起こるはずはなかった。

わたしは記録媒体を握りしめ、左胸に押し当てる。
研究は、必ず成功させてみせる。
それがわたしの使命であり、あの子への『贖罪』となるだろう。
全ての人々を「完璧」な未来へ導くため、
わたし達は、立ち止まってはならないのだ……


蔑視

運送屋 「人を見下した、あの眼差し! たまりませんよね?」

    と、声を大に主張する運送屋。
    それに対し、ババは困ったように言う。

パパ 「あの子は、笑った方が可愛いと思うけどな。僕は」
運送屋「やれやれ、わかっていませんねぇ……笑った方が可愛いな
   んてナンセンス! 価値観を常にアップデートしないと時
   代に取り残されちゃいますよ?」
パパ 「でもほら……あのホログラムで歌を歌ってる子と瓜二つだ
   し。笑顔がきっと似合うはずだよ」

    優しく反論するパパを鼻で笑う運送屋。

運送屋「似てますかぁ? 女性がみんな同じ顔に見えるのは、おじ
   さんの証拠ですよ」
パパ 「似てると、思うんだけどな……」


◤ 側近について ◢

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・性別:女性
・年齢:33歳
・家族構成:母親(脚に疾患アリ)

・人物像: AIによる統治に叛意アリ
>思考が判然としない者より、目的が明確なため御しやすい
>信頼を勝ち取るため、表向きは従順に動くことが予測される

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いずれ私に牙をむくだろうが、精々その日までは国のために働いてもらうとしよう……


◤ 民衆について ◢

 

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・首都人口:6,575,455人
・首都人口密度:9,688.2人/kml

・政治:AI統治制
>人間による評議会は存在しているが、お飾りに等しい
>大多数の国民は、政治体制に疑問を抱いていない

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AIに総てを委ねたからか、鬱病の発症が減少傾向にある。
また、一部の国民の中には、AIを神のように崇めている者もいる。
人は何故、自らが生み出したものを、ここまで妄信することができるのだろうか……?


◤ 研究者の男について ◢

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・性別:男性
・年齡:46歲
・家族構成:独身(両親はすでに他界)・人物像:AI研究に人生を捧げた偏物
>前任者から引き継ぎ、研究所の主任を務めている
>研究者としては優秀だが、対人能力は低い

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目覚めた際に初めて認識した人物。
この欠落の元凶であることは間違いなく、その事実は許し難いものだが……彼の立場では、最良の判断だっただろう。その後の対応も彼が優秀であることを示していた。有用性を示し続ける限りは、働き続けてもらおう。それが、合理的な判断のはずだ。


◤ 歌手について ◢

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・性別:不明
・年齢:不明
・家族構成:不明

・人物像:インターネット上で活動する歌手
>比較的新進の存在でありながら、多くの人気を集めている
>評価した文に頻出する語句は歌声、清廉、柔和、博学など

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本名、年齢、出身などは公表されていないが、一介の歌手を調べるのにリソースを割いている暇もない。
だが、音楽は時に歴史の中で人間を動かした。もし民衆を誤った道に扇動する歌ならば、対処の必要がある。私に彼女の歌を聴く機会が来るなら、それが犯罪捜査でないことを祈ろう。


一号機について

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・性別:なし(人格モデルは私同様、女性型)
・年齢:5歳(廃棄までの稼働年数)
・家族構成 ……いや、私は何をしているんだ。

こんなものを記録しても、意味がないだろう。
きっと、あの夢の所為だ。

そこでは、食卓に着く二人の少女が歌っていた。
優しく微笑む姉と、目を輝かせる妹。
そこに、ケーキを買って来た母親が帰宅する、幸福な家庭。

もし、一号機が失敗していなかったら、私も……

……いや、非合理的だ。人工知能の私が夢を見て、
有り得ないと分かり切った事を考えるなど。
これも、手に入れた右眼による変化なのだろうか?


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