獣人の断章

スポンサーリンク
スポンサーリンク

一覧に戻る

シークレットストーリー

一章 イツカワラシモソウナルノカナ

学舎の生徒の視線が、一点に集まる。
その中心には、長いくせ毛の少女が立っていた。

壇上で背を伸ばし、堂々とした様子で、
先生から記念の金時計を受け取る彼女。
私の、親友…………

「貴女は学舎で学んだ知恵と力を生かし、
魔物に襲われていた町の人を助けてくれました。
貴女の勇敢な行動を誇りに思います」

まるで彼女が世界の中心になったようだ。
生徒たちから贈られる、拍手、拍手、拍手。

講堂の照明の光を受け、輝いている彼女は、
とても綺麗だ。

――ああ、だけど、なんて遠いのだろう……

先生が解散を宣言した後、親友の周りには人だかりができていた。
「すごい」と口々に彼女を称賛するクラスメイト達。
だけれど、どうしてか私は彼女に近づくことができなかった。

私は どじで まぬけで 暗いから
彼女にはふさわしくない……

じわじわと暗い気持ちに蝕まれ、
気づくと学舎を飛び出していた。

私は所在なく、学舎の庭を歩く。
庭といっても、そこら中に木々が生い茂っており、
まるで森のような場所だ。

澄んだ空気を吸い込むと、
ほんの少しだけ気分が晴れたような気がした。
時々、こんな風に誰もいない場所に行きたくなってしまう。

「あれ?」

私はふと、木々の向こうに見慣れない建物があるのを見つけた。
石造りの粗末な小屋だ。

用具入れ? それにしては大きく、
人が住めるくらいの広さはありそう……

扉がほんの少し開いていたので、そっと中を覗いてみる。

「暗いな……」

中はひんやりしていて、妙な悪臭がした。
もっと中に入らないと見えない……
そう思い、一歩踏み出したその時――

「ここに学舎の生徒が来るとは、珍しい」
「わあっ………!」

部屋の中、ほわっと蠟燭の火が灯る。

「ここは、死者の家 ―― モルグ」
「モ、モルグ……?」

蠟燭の載ったテーブルと椅子。
そこに声の主である、お爺さんが腰かけていた。

「ここは、戦争なんかで亡くなった、
引き取り手のない学舎の卒業生の遺体安置所だよ。
皆、お前さんの先輩たちだ」

お爺さんに言われ、部屋の中を見渡すと、
彼の言う通り、遺体の置かれた台が並んでいた。

たくさんの遺体。
中には大きく破損してしまっている体もある。
これが全て、学舎の卒業生だなんて……

「可哀想に
この子らが死んでも、誰も悲しむ者はいない」

怖いのに、
足が地面に貼り付いたみたいに動けなかった。

――学舎の生徒は、家族と疎遠になっている場合が多い。
それは私も、私の親友の二人もそうだ……

学舎を出て、友達とも離れ離れになって、
いつか命を落とした時、私もここへ来るのだろうか……
そう、考えた時――

ガタッ……

蠟燭の明かりの及ばぬ部屋の奥から、
大きな物音が聞こえた。

「なんだ!?」

暗闇から現れたのは、数体の卒業生の死体。
生気のない体を揺らし、唸り声を上げ、
こちらへ歩いてくる……!

「いかん! 君は逃げなさい!!」

私はお爺さんの言葉に、はじかれるようにして
モルグから逃げ出した。

背後からは死体の声が聞こえてくる。

それはあまりに恐ろしく、

でも、それでいて――

泣いているような、声だった……


二章 ジブンノチカラヲシンジテ

学舎にある自分の部屋に帰ってからも、
モルグで襲い掛かってきた死体の姿が
頭の中から離れない。

「どうして死体が動き出したりしたんだろう……」

その時、ぱっとある言葉が脳裏に浮かんだ。

……黒魔術。

それは一部の魔法使いが使う禁術。
失敗した時の代償は大きいが、
普通の魔法ではできない事も可能にする。

魔法史の授業で黒魔術について習った時に、
先生が例としても出していた。

死体を使役する黒魔術……
死者の意志を無視し、無理やり体を利用する。

敵国は戦場で、この残酷な魔法を好んで使用するとも話していた。

その話を聞いた時の、親友の彼女が浮かべた表情が忘れられない。

『許せない……』

彼女は、先生の話を聞いて、怒りに震えながら、涙を流していた。
黒魔術の卑劣さを絶対に認めないと、強く拳を握りしめて一

あんなにも綺麗な涙が、他にあるだろうか……
彼女は昔から、理不尽に虐げられている人を、
放っておく事のできない人だ。

「そうだ、許せない行為なんだ……」

もしモルグに行ったのが彼女だったなら、
きっと可哀想な死体たちをそのままにはしないだろう。

自慢の魔法で華麗に黒魔術を解き、
彼らを解放してあげるはずだ。

―― 私も、あの子みたいに。

講堂の照明を受けながら、光り輝く彼女の姿を思い出す。
手が届かないほど、遠い存在。

でも私が、モルグの可哀想な死体たちを
助けることができたら……

少しは、あの子に近づけるのだろうか。

それは、臆病な私を奮い立たせるのに、十分な思い付きだった。

次の日、私は早速もう一人の親友に会いに行った。
悔しいが、私一人でモルグの死体を相手にすることはできない。

この計画には、彼の力がどうしても必要だった。

――ツンツンと跳ねた髪が特徴的な、
クラスでも一、二を争う秀才……

「あの、貴方って解除魔法が得意だったよね」

私が話しかけると、彼は愛嬌のある瞳をクルリと回して、
得意げに微笑む。

「上級生にも負ける気がしないよ」
「本当? じゃあ、黒魔術の解除とかも?」
「実践はした事ないけど、理論は勉強してるよ」

彼は私の問いに一通り答えると、
「どうしてそんな事聞くの?」
と、好奇心を隠さず聞いてくる。

「一緒に解いてほしい魔法があるの。
貴方じゃないと、駄目なんだ」

私のお願いに、
彼は座っていた椅子からぴょんと立ち上がった。

「そこまで言われちゃ、やるしかないね」

その日の放課後――
私たちは二人で、モルグへ向かった。
建物は昨日と同じように、ひっそりとした佇まいだ。
改めてモルグを前にすると、恐ろしさが蘇ってくる。

中に入れば、特徴的なあの匂い。
そこは暗く、しんとしていたが……

すぐに、低い、地を這うような唸り声が複数、聞こえてきた。

私が杖を掲げ、小さな光で照らせば、
すでに死体たちが不格好な歩き方で、
こちらへと迫って来ている ―― !

親友の彼は、急いで解除魔法の詠唱を唱え始めた。

解除魔法 ―― 特に、黒魔術のそれは、準備に時間がかかる。
彼が魔法を発動するまで、
私が死体たちを引きつけなくてはならない。

「えい!」

死体の周りで小さな火花を弾けさせ、気を逸らす。
私の魔法は弱く、頼りない。

だけどここで挫けたら、きっと一生親友の彼女の横に立てない。
そうやって、自らを勇気づけていたが、

「きゃあ!」

私は急に飛び出してきた死体に驚き、尻もちをついた。

眼前に迫る死者の形相は、直視できないほど恐ろしい。
私は目をつぶり、頭を護るように抱えた。
その時――

「お待たせ!」

彼は大きく杖を掲げ、激しい金色の光を放った。

死体たちの顔の前に、魔法陣が浮かぶ。
それが一際強く光った時、彼が詠唱の結びの言葉を叫んだ。
そして……

「もう、大丈夫だ……」

光が収まっていく。
暗いモルグの中で、死体たちは大人しくなっていた。

その表情が、無理やり動かされていた時と違い、
穏やかに眠っているように見えるのは、気のせいだろうか。

「僕たちの魔法が、この人たちに本当の安らぎを与えたんだ」

気が付くと、彼が私の傍に来ていた。
ふいに親友の彼女の横顔を思い出す。

「そう、だといいな……」

私たちは、戦争で亡くなったという、
先輩たちの冥福を心から願った。


三章 オモイガケナイデキゴト

解除魔法の光に気づき、番人であるお爺さんが
モルグへやってきた。

「まさか、生徒が二人で黒魔術を解いてしまうとは……」

お爺さんは、死体が大人しくなった様子を見て驚いた後、
私たちを勇気のある、優しい生徒だと褒めてくれた。

私は計画が上手くいった事に夢見心地で、
学舎への帰り道でも、親友の彼とはしゃぎまわっていた。

お爺さんから言われた言葉は、普段の気弱な自分を忘れさせ、
私を特別な人間になったような気分にさせた。

―― これで親友のあの子にも少しは近づけただろうか……

今日のこの出来事を、親友の少女にも話してみたらどうか。
そしたら、あの子もお爺さんのように褒めてくれるんじゃないか。
そんな妄想に胸を膨らませていると、

「ねえ、とてもこのまま帰る気分になれないよ!
一緒に鐘つき塔に登らない?」

親友の彼が、校舎の一番高い塔を指さし、言う。

「うん、いいよ!」

幼いころ数回訪れたその場所はとても見晴らしがよく、
勝利の余韻が残る、今の気分にぴったりな場所に思えた。

塔のてっぺんには大きな鐘が吊り下げられており、
いつも決まった時間に鳴る魔法がかけられている。
学舎の周りを囲む森も、すぐ近くの魔法使いの街も、
鐘つき塔から、一望することができた。

「いい眺めだね」

初めて来た時は高くて少し怖かったが、今はもう平気だ。
私は、自分が強くなったかのような気持ちになり、
また気分を良くした。

「ねえ」

隣に座った、親友の彼が遠くを見ながら言う。

「君の作戦、うまくいってよかった。
ちょっとはらはらしたけど、僕達いいコンビだったよね」

「うん。黒魔術が解けて本当によかった。
私一人じゃ何もできなかったから、ありがとう」

私がお礼を言うと、彼は首を振った。
「そんなことないよ。やろうって君が思ったことがすごいんだよ」
「え?」
「戦死してもなお、無理やり動かされていた先輩たちを、
助けたいって思ったんだろう?
君のそういう優しいとこ、すごくいいと思う」

涙を流すほど黒魔術に怒りを感じていた、親友の彼女。
私は自分と彼女が重なったように感じ、くすぐったくなった。
照れる私に、彼は更に続ける。

「やっぱりさ、僕達って最高だよね。
学舎に入ってすぐ仲良くなって、今まで一緒にいて……
ずっとそう思ってたんだ!

……いつも優秀な二人の親友が、ドジな私を助けてくれる。
私は幸運にも仲良くなれたけど、本当は二人にふさわしくない。

そんな風に思っていたから、
彼が私のことまで「最高だ」と思ってくれる事が、
少し信じられない。

私は、頬を紅潮させ、彼の方を見た。
「僕はこの出会いが運命だったって思ってるんだ。
……君はどう思う? きっとただの偶然じゃないよ。
僕は、これからもずっと一緒にいたいと思ってる」

余裕たっぷりになんでも卒なくこなす彼が、
今は少し緊張している……

私も、ずっとずっと、三人で一緒にいたい。
彼の言葉を聞き、強くそう感じた。
だから、

「わ、私もそう思う!」

勢い込んでそう伝える。
すると、彼がぱっとこちらを見た。
花が咲いたような笑顔だった。

「嬉しいよ。君も同じ気持ちだなんて……」

私は彼に微笑み返そうとしたが、それはできなかった。

気が付くと、彼の顔がぐっと近づいてきて、

私の唇に、生温かい物が押し付けられていたのだ。


四章 ソンナツモリジャナイノニ

いつも通りの朝。
私は寝不足の瞳を擦りながら教室に入ると、
親友の少女の横の席に座った。

「おはよ。昨日夕食の時いなかったけど大丈夫?」
「うん………」

私が頷くと、彼女はとりあえず納得したようだ。
そこへ、

「おはよう、二人とも。今日の魔術史のテスト勉強やった?」

明るい声が聞こえてくる。
もう一人の親友の少年だった。

「当たり前。完璧に復習してきたわ」
「じゃあいつもみたいに勝負する?」
「絶対に負けないと思うけど?」

惚けている私を置いて、親友の二人は毎度の如く
テンポのいいやり取りをしている。
本当に不思議なくらい、いつも通りの日常……

「あ、そうだ。
今日の授業終わり、新しくできた雑貨屋に行こうよ」

親友の少年が、思いだしたように提案する。
しかし、親友の彼女は首をふった。

「ごめん。私はパス。
用事があるから、二人で行ってきてちょうだい」

彼女の言葉に、私はドキッとする。
どうしよう……
私は言葉を詰まらせたが、

「もちろんお土産はお願いね」
「う、うん」

彼女の笑顔を曇らせたくなくて、
流されるように頷いてしまった。

新しい雑貨屋は、買うものに迷ってしまうくらい
品物が豊富だった。

彼と歩いている時間は居心地が悪かったが、
一緒に来られなかった彼女のお土産を
二人で選ぶのは楽しい時間だった。

しかし、帰り道でおもむろに彼が言った言葉に、
私は凍り付く。

「実は今日、彼女が来れないって言ったの、
ちょっと嬉しかったんだ」

「どうして?」

「二人きりになる時間ができたなって。
君はどう?」

「私、は……」

私の言葉は、彼を傷つけるかもしれない。
でも、彼の誤解を解かないと……

「あの、私、貴方と付き合うことはできない……よ。
貴方には、私より似合う人がいると思うし……」

―― 言った。

彼は、黙っていた。

私は恐る恐る、顔を上げて彼を見る。
すると、予想とは異なり、彼はうっすらと微笑んでいた。

「大丈夫。自信を持って!」
「え……?」

言葉の意味が、分からなかった。

「君はちゃんと、僕にふさわしい相手だよ」
「えっと……」
「でも、そうやって悩んじゃうとこ、可愛いな」
くす、と彼が目を細める。

「そんな君に、僕からのプレゼント」
彼は手を伸ばし、私の髪に花の形のピンを飾り付けた。
そして驚いた私が身を引こうとすると、耳元でこう囁いたのだ。
「キスされるかと思った?」

「っ……!」
「それはまたの機会に」

まるで、いつもの彼じゃないみたいな眼差しだった――
ねっとりと体に纏わりつくような視線。
私は吐き気をこらえるので、精いっぱいだった。

唇の感触は、何度口をすすいでも消えない……
「やだ……」
耳に残る彼の囁き声が、鼓膜の奥でずっと響いてる……
「やだ! やだ! やだ!!」
触られた所から、汚れていくように感じた。
あの視線を思い出すだけで鳥肌が立って仕方なかった。

「キモチワルイ キモチワルイ キモチワルイ!!」

私は鉄で、がむしゃらにベッドを切り裂く。
だけど、どんなに喚いても、どんなに暴れても、
気持ちは晴れない。
そのせいで、私の部屋は酷いありさまだ。

「どうして……」

……もしも彼と気まずくなったら、
親友の彼女との関係は、どうなるだろうか――

きっと、彼女は優秀な彼に付いていく。
私は彼女と、友達ですらいられなくなってしまう……!

「いやだよ……」

モルグの死体の呪いを自分の意志で解いて、
親友の彼女に少しは近づけたと思っていた
そう、浮かれていたことが、随分昔の事のよう。

手元にあった、花の形のピンを、壁に向かって投げつける。
私はこれからの日々を想像し、
呪いの言葉を吐きながら涙を流した。


布の中に隠しているのは

貴方は知っているかしら?
森の奥に住む、魔法使いを100人殺した、
それはそれは醜い獣人のお話を……

どんな恐ろしい姿をしているかって?
そうね、その身は布で隠されているから、
顔を見たことのある人はそんなにいないはず。

あら、ママと似てる?
ふふ。お洒落な白い布はそうかもね。

……でもね、醜さっていうのは
どんなに人から上手に隠しても、
自分自身を誤魔化すことはできないの。

自ら向き合わない限り、
救われることも、逃れることもできない。
あの子がそれに気付ける時は来るのかしら……?


鏡の精霊のおまじない

これであなたも魔女になれちゃうかも?
秘密のおまじないを試して、精霊を呼んでみよう!

1、満月の夜に、窓を開けて、部屋いっぱいに風を入れましょう
2、しっかりお風呂で体を洗ったら、お気に入りの服を着ます
3、心の準備ができたら、綺麗なハンカチを敷いて、
_その上によく磨いた鏡を置いてみましょう
4、顔を鏡に映して、じっと鏡の中の自分と向き合います
5、そして、厳かに呪文を唱えましょう
_「ポポロ カロス テラル ポポロ カロス テラル
__私の本当の友達よ姿を現して」
6、やがて、鏡に映る貴女の姿が精霊の姿に変わっていきます
7、精霊は貴女のよき友として、貴女を護ってくれるでしょう

気分が悪くなった場合はすぐにやめましょう
精霊が現れなくても、根気強く続けることが大切です


町の子供たちの噂

「ねぇねぇ、僕昨日、変なものも見たよ!
_白いシーツみたいなの被った、大きなお化けみたいなやつ!
_夜に外を歩いているのを見たんだ」

「え~、証拠あるの?」

「しょ、証拠はないけど、本当だって!
_大きなずた袋を引きずって、目を擦りながら歩いてた。
_多分だけど、泣いてたんじゃないかな」

「あっ、そう言えば私、ママから聞いた事あるわ。
_災いをもたらす化け物と、祝福をもたらす化け物の話!」

「どちらも白い布を被ってるんだけど、
_災いの化け物の方は、世にも醜い顔をしているんですって」

「え、じゃあ僕が昨日見たのはどっちなんだろ。
_今度捕まえて、調べてみようかな……」


図書館の縁結び

それは、図書館で出すには少し大きすぎる声だった。

「知ってる? 図書館の噂!」
「図書館の噂って20個超えてるらしいけど」
「違うよ。100個だよ!」

くすくすという笑い声も不快で、私は微かに眉をひそめる。

「わたしが言ってるのは、『契約のおまじない』だよ!」
「なにそれ? 知らない!」
「図書館の一番奥にある本棚の端に、自分と相手の名前を彫るの!
先輩はそれで、希望する相手と契約できたって!」

図書館の一番奥……どの本棚だろう……
そこに私とあの子の名前を彫ったら、もしかしたら……

騒がしい女の子たちがいなくなっても、
私は本に集中することができなくなっていた。


森の遺跡に住まうモノ

薬草探しの課題のため、いつもより少しだけ
深く森の中に立ち入ったつもりのはずが、
もうどっちの方向に進めばいいのか分からない。
ただでさえ、魔法使いの謎の失踪事件が続いているのに……

歩き回るうちに辿り着いたのは、遺跡のような、
幻想的で美しい、不思議な場所だった。
先ほどまでの不安を忘れ、胸を躍らせ奥へと進むと、

「ヒッ……!」
不意に漂ってきた腐臭と異様な数の虫の群れ。
そしてばらばらになって積まれている、
私と同じ制服を着た学舎の生徒たちの……

後ずさり、ぶつかったのは大きな姿見だった。
その中では、巨大な影が咆哮を上げながら私に向かって
腕を振り下ろそうとしているではないか。
でも何故だろう、その影はとても悲しそうに見え……


酒場の得恋指南

店カラ出テクル人ノ気配二気ツキ、私ハ物陰二身ヲ潜メル。
「お前ら知ってるか? 女を一発で虜にする方法」
「お前のカミさん、俺らが若い時にゃ美人で有名だったもんな」
「ハハハ、あん時は相手にもされなかった。それがどうだ……」

半分呂律ノ回ッテイナイ喋リト、下卑夕笑イ。ソシテ高マル期待。

「新月の夜にしか咲かない赤く光る花を浮かべた酒を飲ませて、
介抱するふりして暗がりで■して■に■■ったくって■ったら、
今度はむしろお嬢様の方から熱っぽく俺を求めてきやがった!」
「お前それ、外道のやり方じゃねえか。最低だな!!」

開クニ堪エナイ会話ダッタガ、魔法薬学ノ応用技術ヲ使ッテイル。
私八彼等ノ気配ガナクナッタノヲ確認シ、ソット顔ヲ出シタ。

―― モシモ、モシモ男ガ話シテイタ方法ヲ、アノ子ニモ試シタナラ
アノ子モタマラズ、私ダケヲ求メルヨウニナルンダロウカ……


© SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

コメント

error: 経路は封鎖されています。
タイトルとURLをコピーしました